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マネジメント・レポート MANAGEMENT REPORT

人を育てる仕掛け

株式会社アバージェンス

代表取締役社長 葛西幸充

高まる人材育成の重要性

日本国内では大幅な労働人口の減少が確実となる中で、日本企業の共通する経営課題は①バリューフィットする人材の確保、②人材の早期育成・戦力化、③AI・ロボット等のテクノロジーを活用した生産性向上・技能伝承だろう。そして、その重要性と難しさが故に、今回は「②人材の早期育成・戦力化」に焦点を充てて、経営コンサルティングファームのアバージェンスがこれまで試行錯誤しながら、確立してきた人材育成の方法論について共有していきたいと思う。

人を育てることの難しさ

多くの企業にとって、人材育成は重要なイシューとして位置づけられているが、簡単に解決できるものではない。実際に、多くの経営者や組織リーダーと会話する中で、「研修制度はあるものの、なかなか人が育たない」、「自分自身の分身を創りたいが難しい」、「ベテランがいなくなった後、業務が回るかどうか心配」という声はよく耳にする。確かに、階層別の研修や専門的分野の研修などを導入されている企業は多いけれども、研修と実務との乖離を埋めるには至っていないのが実情ではないかと思う。そもそも研修だけで人材を育成するのには限界があるし、OJT(On the Job Training)が十分に機能している企業を私は殆ど見たことがなく、この二つだけでは有効な方法にはならないと思う。

では、「どうやったら人材育成ができるのだろうか?」という問いが皆さんの頭に浮かぶと思うが、それに対する我々なりの解を提示していきたいと思う。

人を育てる6つの要素

アバージェンスでも約8年前に社内研修「keiko」を開発して、毎週テーマを変えて、研修を実践し続けた。研修も知識提供型ではなく、ワーク中心のコンテンツに仕立てた。が、それだけでは正直不十分だった。そして、議論と試行錯誤を繰り返す中で、人材を育成するためには6つの要素が必要だという結論に至った。

その6つとは、①ありたい人材の定義、②教育機会の提供、③知見獲得機会の提供、④実践機会の提供、⑤壁打ち機会の提供、⑥成長に対する評価と教える機会の提供、である(図1参照)。これら6つが機能することが人材育成の要諦ではないかと我々は考えている。

基本的な考え方としては、ありたい人材要件を明確化し、全員に共有した上で、5つの機会(教育機会・知見獲得機会・実践機会・壁打ち機会・評価と教える機会)を提供することである。

  • ありたい人材の定義:階層毎にありたい人材の要件を行動ベースで言語化し共有
  • 教育機会:研修を介して、知識や思考方法などを獲得できる機会
  • 知見獲得機会:実務で活用できる知見(ナレッジ)にアクセスできる機会
  • 実践機会:知識や思考方法や知見を活用して、実業務で試行できる機会
  • 壁打ち機会:実践した結果や学びについて、上位層からフィードバックをもらう機会
  • 成長に対する評価と教える機会:成長への評価獲得の機会と知識・経験を教える機会

これが我々の考える6つの要素である。皆さんの所属する企業や組織に当てはめた時に果たして十分に機能しているだろうか。もし人材育成が上手くできていないのであれば、どこかの要素(又は複数の要素)が足りていない可能性が高いと思う。

人を育てる仕掛け創り

ここまでは人材育成に必要な6つの要素について言及してきたが、次にそれらを会社の仕組みとしてどのように組み込むと効果的なのかを解説していきたいと思う。我々、アバージェンスでは6つの要素を考慮して、下図のような人材育成の仕組みを構築している(図2参照)。

では、どういう仕組みなのかを6つの要素に照らしながら解説をしていく。

  • ありたい人材の定義:入社時に航海指針(数年後のキャリア目標とマイルストーン設定)を描くとともに、階層毎の人材要件(=昇格要件)を共有
  • 教育機会:入社時の研修(keiko SHIRO)、1-2年目を対象とした研修(keiko AKA)、2-3年目を対象とした研修(keiko AO)を毎週オンライン開催し、上位層が型見せ
  • 知見獲得機会:過去のプロジェクトでの知見(課題・打ち手・成果・学びを纏めた資料)や業界別テーマ別資料をナレッジとして登録・共有・活用
  • 実践機会:未経験の業種やテーマのプロジェクトへ優先的にアサインするとともに、プロジェクト開始前に貢献・成長・行動ゴールを設定
  • 壁打ち機会:入社してから1,000単位まで「日々の学び」を書き続け、経営幹部やプロジェクトリーダーがフィードバック。また、一人一人のメンバーにメンターをアサインし、月1回の相談会を開催
  • 成長に対する評価と教える機会:プロジェクト終了時点で設定したゴールに対する達成状況の振返りと評価を行い、次なる課題を特定。また、プロジェクト毎の評価を踏まえて、半期毎に昇格・昇給を判断。さらに、一定以上の経験を積んだメンバーにはkeikoの講師役に任命(教えることで学びを昇華)

上記は、あくまでアバージェンスでの取組み事例だが、このような仕組みを回し始めてから確実に人材育成のスピードが向上したと実感している。とはいえ、「我々と同じことを試行しましょう」という主張するつもりはなく、重要なのはそれぞれの企業や組織に応じて、6つの視点で仕掛けを検討し、試行錯誤を繰り返して、確立していくことである。そして、仕組みを確立した上で、経営者や組織リーダーが本気で仕組みの浸透と定着をさせていくことである。それがなければ、せっかく創り上げた仕組みも形骸化していくだろう。

人材育成は永遠のテーマ

さらに、人材育成の仕組みは確立・定着させたら終わりではなく、環境変化や顧客ニーズの変化に応じて、組織として具備すべき人材のスキルセットも変わってくるものであり、定期的にアップデートをしていく必要がある。特に、生成AIの台頭によって、我々の仕事の仕方や役割が劇的に変わってきている中で、生成AIを活用できる人材が多くいる企業と、そうではない企業とでは大きな差が生じてくるだろう。そういう変化に対応していくためにも、人材育成の仕組みも定期的に見直していく必要があり、それを見極めていくことも経営者や組織リーダーの重要な役割の一つだと私は思う。

最後に

今回は、「人を育てる仕掛け」について、最後までお読み頂きありがとうございます。我々なりの方法論を解説しましたが、如何でしたでしょうか。なお、今回の内容を詳細説明した動画配信もしていますので、合わせてご覧ください。

未経験から「ものの数年」で戦力化する人材育成方法

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