事例紹介 / CASE STUDY

AIM コラム COLUMN

企業成長の鍵を握る”社内変革推進者”

株式会社アバージェンス

マネジャー

北村貴志

ニッポンの“変革ブーム”

最近、ビジネスに関するメディアで毎日のように目にするDX。2022年時点では、半数以上の企業がDXに取り組んでいると言われている[i]。この“X”は”Transformation”の略で、日本語では”変革”と訳せる。最近では、同様にBX(=Business Transformation)やGX(=Green Transformation)、SX(=Sustainability Transformation)と言うように、様々な”X”がビジネス界に飛び交っている。今、正に日本は”変革ブーム”と言える。

そもそも、”変革”とは何なのかを改めて考えてみたい。似た言葉に、『変化』がある。『変化』と『変革』。字義[ii]を調べてみると下記の様に書かれている。

変化:ある性質、状態が他の性質、状態に変わること。または変えること

変革:社会、制度を変えて新しいものにすること。また、制度などが改まること

この定義を踏まえると、『変化』と『変革』の違いは、物事の構造変化が含まれるかどうか、という言い方が出来るかもしれない。ビジネスの文脈では、会社の組織や制度、その会社の置かれている環境(=市場、分野、業界)などが当てはまるだろう。

こうしてみると、企業に求められる変革には、単なる性質や状態の変化ではなく、会社としての組織や制度、そして置かれている環境(=市場、分野)を変えるといった構造的な変更が求められる。そしてそのいずれにおいても、企業にとっては相当の負荷がかかる。それ故、変革実施は会社にとって非常に重要な意思決定になる事が多い。変革とは、今日明日で成し遂げられるものではない。後戻りもできない。それ程までに重たい決断を、多くの日本企業が差し迫られているということだろう。

“変革”のジレンマ

何故、日本企業は変革に取り組むのか。その答えは明らかだ。多くの業種・分野で市場が成熟している。その突破の為に、変革が必要とされている。外向けでは、環境(=市場、分野)変化や拡大を目指し、内向けには、社内組織や制度の変更、既存商材やサービスの変更、新規商材やサービスの開発、といったことが必要になる。いずれも難易度が高く、負荷も大きい。

難度が高く負荷も大きい変革をどう推し進めていくか。弊社のようなコンサルティング・ファームを起用するのも1つの選択肢である。ただし、外部起用は手段の一つであり、本来的にはそのような手段を活用しつつも、企業自身が主体的に内部リソースや知見を活用・工夫しながら行うのが佳い。そうでないと自分事化できない。自分事化できなければ、今日明日で成し遂げられるものではない変革が、途中で瓦解してしまう。

とはいえ、自社の変革(字義どおりに言えば自社内外の“社会、制度を変えて新しいものにすること”)を自社だけでやり切れるか、に不安と疑問が残るのも事実だろう。セルフ・マネジメントの難しさがあるからだ。

自社内の変革をどれだけ自分たちで推進出来るか。“変革”に取り組む企業の成長の鍵は、ここにあると私は思う。この後、今まで申し上げてきたことを表す事例を紹介していく。

”社内変革推進者”を育てる-概要-

我々アバージェンスがお客様の”変革”を支援させて頂く際、我々は、お客様側からアバージェンスと共に変革を主導していく専従メンバー(=タスクフォース)を選出頂くようお願いしている。変革プロジェクトの期間中、タスクフォースは我々と一緒になって顧客組織内の変革活動を推進していくことになる。タスクフォース起用の狙いは、顧客企業内に”変革の遺伝子”のようなものを植え付けることにある。我々の伴走はいつか終わる。本来的には、終わらなければいけない。その後は顧客企業自身が、アバージェンスの伴走無しでも変革を進め続けることが重要となる。その為には、それなりの仕組みや仕掛けが必要であり、その一端を担うのがタスクフォースである。

タスクフォースには我々と同じ動きをしてもらう必要があるため、変革プロジェクトを成功させるためのノウハウはタスクフォースに余す所なくお伝えする。その機動力となる我々の熱量もお示しする。変わるか変わらないかの分水嶺になる限界突破を推し進める気概もお見せする。

変革プロジェクト序盤は我々が主導するが、徐々に我々のノウハウに基づくワーク、目標達成の為の熱源、限界突破の気概、をタスクフォースに委ねていき、プロジェクトの後半にはタスクフォース自身がプロジェクト運営を出来るようにする。そうする事で、変革推進に必要なことがお客様の中に蓄積されていき、変革を進め続ける熱量と愛に満ちたタスクフォースが育つ。

”社内変革推進者”を育てる-具体-

私が直近、担当させていただいたお客様は販売代理業を営む企業だった。その業界の市場は成熟してきており、業界の市場規模は年々右肩下がりになっていた。右肩下がりしていく市場で成長するには、自社の提供価値向上によるシェア拡大と近隣市場への参入が必要であり、このお客様もそのための戦略遂行に全力で取り組んでいた。それを通常業務として行うのではなく、自社にとっての変革と位置づけた上で、遂行にあたる全メンバーの行動と意識をガラッと変えることが、この変革プロジェクトの目標となった。もちろん、ストレッチされた財務的な成果も目標となった。我々アバージェンスと、お客様内で選抜されたタスクフォースとがチームを組み、変革推進役として、共通ゴール追求という御旗のもと、何をいつどうすればよいかを決め、それを実行していった。

プロジェクト序盤では、我々が変革を成功させるために重要なコツや知見・ノウハウをタスクフォースに説明しながら、我々が主導で変革を推し進めた。課題把握のヒアリングに始まり、課題バラシと真因特定、真因からの打ち手導出、打ち手の優先順位付けなどなど、ベタだが必要なことを、我々とタスクフォースとが入り混じりながらやっていった。入り混じり、といってもただ横で見ていてもらうときもあれば、一部を実施してもらうこともあるという、まさに分けようのないOff-JTとOJTを一緒に進めていった感じである。

大変なのはタスクフォースの方々だ。自社組織や自社事業についての理解や洞察は課題発見などにとても役立つのだが、他方で自らにも染み込んでいる自社の常識(=変えていかなければならないこと)を払拭するのは難業だったと思う。「アバージェンスはなぜ、そんなことにこだわるのか…???」という疑問も多かったはずである。「やらずに文句を言うことはしない。まずはやってみて、その結果から判断するという行動第一で取り組む」と宣言してしまった以上、『?』を持ち続けながら、自分の同僚や元上司に正論をぶつけていくのは難儀だったはずだ。もちろん、タスクフォースの疑問は我々に投げかけてもらい、議論をして、納得をしてもらいながら活動していったのだが、それでも難儀だったことに変わりはないだろう。

必然的にタスクフォースの方々と我々の対話はとても高頻度で高密度になる。毎日のように対話を繰り返し、プロジェクトの目的・目標、進め方、熱量、気概等の認識や目線を擦り合わせていく。共通認識を持てるようになった頃にはプロジェクト中盤に差し掛かっていた。我々にしてみれば予定通りの進捗だ。そしてプロジェクト中盤以降は、まさにタスクフォースとの共創となった。

打ち手の進め方を主要な管理職と検討する会議の準備や当日のファシリテーション、主要管理職と個別に議論し合う1on1ミーティング、などなど、まさに変革推進者としての行動をタスクフォースの方々が実践していけるようになった。ここまで来ると、翌週、翌々週のToDoや進捗の遅い打ち手の挽回策など、変革の目標達成に重要な組立てを一緒に実施できた。プロジェクト・リーダーであった私にとって、タスクフォースの方々の貢献はとてもありがたく、そして、「もっと高水準のタスクをお願いしても十二分にこなしていただけそうだ」という感触を得ることができた。

最終的にプロジェクト後半では、タスクフォースが主導で変革を進め、それを我々アバージェンスがサポートしていく形をとることができた。

人間が行う行為のバックグラウンドには、からだの部分、つまり『ワザが充分か?』ということ、あたまの部分、つまり『思考や理解が足りているか?』ということ、そしてこころの部分、つまり『それをやりたいか?やることで自分は高揚するか?』ということがある、と私は思う。

今回、事例として紹介したこのプロジェクトのタスクフォースの方々は、からだ、あたま、こころ、が変革推進者として実に相応しいと、僭越ながら、私は評価し敬意を表す。

今後の変革

結果的に、このプロジェクトは大成功であった。短期間の取り組みにも関わらず、定量的な成果はグンと上がり、先行きがとても楽しみである。短期間の取り組みにも関わらず、社内の様変わりは誰の目にも明らかで、これも先行きがとても楽しみである。短期間の取り組みにも関わらず、タスクフォースは大きな成長を遂げ、今後の変革先導者としての活躍が、さらに楽しみである。

このお客様にとって、変革は一過性のブームでもなければ、他人に頼ったものでもない。お客様自身が完遂したい事として、自らの手中に手繰り寄せたものだ。環境変化は相変わらずだが、このお客様はきっと今後も変革し続けていくのだろう。その変革の遺伝子は既に植え込まれているのだから。今後も、お客様の変革推進を見守り続けたいと思う。

以上


[i] 『日本企業の経営課題2022 調査結果速報 【第1弾】』(一般社団法人日本能率協会)https://jma-news.com/wp-content/uploads/2022/11/221104_keieikadai_DX_release_.pdf

[ii] 『変化』、『変革』(コトバンク)https://kotobank.jp/word/%E5%A4%89%E9%9D%A9-626094

  • HOME
  • コラム
  • 企業成長の鍵を握る”社内変革推進者”