株式会社アバージェンス
シニア・マネジャー
増田 大祐
同じ失敗を繰り返すチームに共通するのは「内省の欠如」。本稿では、経験を学びに変える内省の重要性と、成果に繋がる仕組み化の4ステップを紹介します。
多くの組織が陥る「マネジメントの落とし穴」
私たちAVIは、クライアントの組織課題を解決するため、マネジメントとオペレーションの両側面から支援を提供しています。独自のフレームワーク【6 Gap マネジメント®️(下図)】を用い、現状を可視化し、これまで数多くの企業の課題特定と解決に伴走してまいりました。

かくいう私も、様々なクライアントのマネジメント課題を深掘りする中で、業種や規模を問わず、ある共通の課題点に気が付きました。それは、経験から学ぶ「内省(振り返り)」が決定的に欠落している、あるいは個人任せになり、全く仕組み化されていないという問題です。
多くのチームが同じ失敗を繰り返し、成長の機会を逃している。この非常にもったいない現状を、あなたもご覧になったことはないでしょうか。本稿では、この「内省」を体系化し、組織の力に変える具体的な方法をご紹介することで、読者の皆様の一助になればと考えております。
なぜ「内省」がチームの成果を左右するのか?
では、なぜ「内省」がそれほど重要なのでしょうか。ズバリ端的に申し上げると、その効果は「行動の質と再現性の向上」という一言に集約されます。
パナソニック創業者の松下幸之助氏は、かつてこう語りました。
『反省する人はきっと成功するな。本当に正しく反省する。そうすると次になにをすべきか、なにをしたらいかんか、ということがきちんとわかるからな。それで成長していくわけや、人間として。』
「内省」は、単なる「反省」とは違います。反省というと、どこが悪かったのかの指摘を重視するような、どことなくネガティブな響きがありますが、内省とは客観的に成功と失敗の両方から学び、チームを成長させる原動力となります。具体的には、次の2つの効果が期待できます。
- 失敗の経験を「学び」に変える 行動の結果を振り返らなければ、失敗の原因は曖昧なままです。原因が分からなければ、同じ過ちを繰り返し、成果は遠のきます。メンバーは自信を失い、チームは俗にいうスランプに陥ってしまうでしょう。「内省」は、失敗の原因を特定し、次にとるべき行動を明確にすることで、チームをスランプから守り、パフォーマンスを向上させます。
- 成功の再現性を高め「チームの資産」にする 「内省」は、成功体験にも適用できます。「なぜ成果が出たのか」を分析し、成功の要因となったキーアクションを特定・言語化する。これにより、個人の経験が「誰でも再現できるノウハウ」へと昇華します。私は、その知見をチーム全体で共有すれば、組織のボトムアップに繋がり、継続的に成果を出す強いチームを育てることができると考えております。
例えば以下のような単純なフォーマットを用いてGood、More、Tryを関係各位で冷静かつ客観的で前向きに検討し言語化するだけで、単なる反省に留まらない実りある「内省」ができるでしょう。
成果に繋がる「正しい内省」を仕組み化する4つのステップ
私がクライアントと議論する中で、「彼らは去年も同じ失敗をしたのに、何も学んでいない」といった経営層の嘆きや、「以前試してダメだった施策をまたやるのは不安だ」という現場管理者の声に、何度も直面してきました。これらのような話が頻出することも、やはり「内省」不足に起因していると強く感じています。
では、『本当に正しい反省』とは、具体的にどう実践すればよいのでしょうか。ここからは、私なりの「正しい反省」のやり方として、4つのステップをご紹介します。
ステップ1:信頼関係をもとにした客観的対話を通じて行う
まず、重要な事は振返りは誰かと実施するという事です。一人内省するのも大切ですが客観性を担保するには他者との対話を通じて行うのが良いでしょう。一人だけの内省は、状況把握や原因分析、対策考案のどこかで偏りが生じる可能性が否めません。このとき、対話する他者との信頼関係が必須でしょう。振返りには【反省をもとに叱責を受ける場】という勘違いがついて来がちです。それは正しい内省ではありません。
内省対話の最適な相手は信頼できる上長です。「反省会」や「叱責の場」ではなく「未来の成果を共創する場」になるようにしましょう。
ステップ2:アクションを明文化する
内省とは客観的な状況把握と原因分析に基づく対策考案のためのものであるべきですが、つい「だれ(なに)が良かった、悪かった」からの深掘りが進まず、「次からこうしよう」という前向きな改善行動に至らないケースに陥りがちです。
例えば以下のような単純なフォーマットを用いてGood、More、Tryを関係各位で冷静かつ客観的で前向きに検討し言語化する、特に「次からこうしよう」を重点化することで、単なる反省に留まらない実りある「内省」ができるでしょう。
ステップ3:成果出しまで寄り添う
そして、【打ち出した改善行動には、誰かが伴走し成果まで見届ける】必要があります。本筋は上司と部下なら上司が、PJリーダーとメンバーならリーダーがしっかり寄り添うことだと思います。次なるアクションが羅列されたら後はお任せでは、成果に繋がりづらいでしょう。振返りの真価が発揮されるのは改善行動の結果として成果が出た瞬間です。そしてこの瞬間が訪れる事で振返りが自分事化し、定着していきます。
ステップ4:全体に対して共有し全体のボトムアップ・再現性向上につなげる
このような振り返りから得られる成果創出や、得られた知見、成功事例はチーム全体に共有しましょう。一つの成功体験が組織全体の成功へと繋がっていきます。個人の内省をチームの資産へと昇華させましょう。関係者全員が全体を広く把握し、成功には深く関わり合い、自分ごとのような手触り感を得て内省の効果を伝播する。こうすることで成果創出は個人技ではなく、チームの集合知として相乗化するでしょう。
ステップ1から4をチームに定着させるために必要な仕組み場の鍵は「1on1ミーティング」 です。全体共有も重要ですが、共有される内容は1on1で上司と部下との、リーダーとメンバーとの対話の重なりと連なりです。個々の事例の全体共有、という順序でチーム内コミュニケーションを仕組み化すると良いでしょう。
1on1対話に関するアバージェンスのナレッジのイメージ図を添付します。仕組み化のヒントになれば幸いです。SMSとは、Sustainable Management Skillsの略称で、人と人との関係を維持向上させるために必要な工夫をまとめたものです。


まとめ:失敗を「資産」に変える文化を
近年の不確実性が増すビジネス環境において、失敗は不可避です。過去の成功体験が通用せず、突破口が見いだせないという悩みは、多くの現場で聞かれます。
しかし私は、解決の糸口の多くが既に「失敗」という形で皆さんのなかに蓄積されていると考えています。これらの失敗から学べなければ、それは単なる時間とコストの損失でしかありません。
読者の皆様には、体系化された内省を通じて、失敗を知見という「資産」に変え、次なる成功の糸口を見出していただくことを心から願っています。
以上