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Daily Learning – 日々学ぶことを行動習慣化し、一流のプロフェッショナルたれ –

アバージェンスマネジメント研究所

主席研究員

松尾 篤賴

第1章:はじめに – なぜ、ビジネスパーソンの成長は30代で停滞するのか

一定の業務経験を積み、日々の仕事を危なげなくこなせるようになる。それはプロフェッショナルとしての一つの到達点です。しかし、多くのビジネスパーソンが30代前後で、ある種の「成長の踊り場」に直面します。かつてのような急成長の感覚は薄れ、自身のスキルが陳腐化していくような漠然とした不安を感じたことはないでしょうか。

技術の進歩は加速し、市場のルールは絶えず書き換えられています。昨日までの成功方程式が、明日には通用しなくなる。そんな時代において、過去の経験だけに依存することは、緩やかな後退を意味します。

では、厳しい環境変化の中、常に価値を創出し続ける「一流のプロフェッショナル」は、何が違うのでしょうか。その答えは、彼らが例外なく、意識的な「学びのアップデート」を呼吸するように続けている点にあります。本稿では、この「学びの習慣」を、単なるインプットに終わらせないための、極めて重要な原則について論じます。

第2章:インプットの罠 – 「知っていること」と「できること」の大きな隔たり

成長の必要性を感じた真面目なビジネスパーソンほど、読書やセミナーへの参加、資格取得の勉強に多くの時間を費やします。こうしたインプット活動は、知的好奇心を満たし、一時的な成長実感を与えてくれるでしょう。しかし、その多くが、ビジネスの現場での具体的な成果に結びついていないという現実があります。

これは、インプット自体が目的化してしまう「インプットの罠」です。多くの知識を蓄えながらも実践が伴わない、いわゆる「ノウハウコレクター」の状態に陥ってしまうのです。

もちろん、「良い仕事(アウトプット)」のためには「良い学び(インプット)」が不可欠です。インプットは、良質なアウトプットを生み出すための「必要条件」ではありますが、それだけで「十分条件」にはなり得ません。知識は、使われて初めて価値を生むのです。

第3章:学びを『武器』に変える、即時アウトプットの原則

では、どうすればインプットを真に価値あるものに変えられるのか。その答えは、本レポートの核となるメッセージ、「インプットをしたら即時アウトプットをして、学びを自らの武器に変える」という原則に集約されます。

書籍で学んだ新しいフレームワーク、セミナーで聞いた斬新なアイデア。それらの知識は、インプットした直後が最も熱量高く、実践への転換エネルギーを秘めています。この熱が冷めないうちに、意識的に「アウトプットの機会」を設けるのです。学んだ分析手法を使って担当業界を再分析してみる。新しい交渉術を、翌日の商談で試してみる。この「即時アウトプット」こそが、知識を単なる情報から、いつでも使える強力な「武器」へと鍛え上げる唯一のプロセスです。

さらに、アウトプットを前提にすると、「何を、どのように学ぶか」というインプットの質そのものが劇的に向上します。漠然と本を読むのではなく、「この知識を明日の会議でどう使うか」という目的意識を持って読むことで、情報の吸収率は格段に高まるのです。

第4章:実践なき学習は無意味である ― 私が働きながらMBAで学んだこと

この「即時アウトプット」の原則がいかに強力であるか、筆者自身の経験をもって説明させてください。私はアバージェンスでコンサルタントとして働きながら、ビジネススクール(MBA)に通いました。仕事を休職して学びに専念する道もありましたが、敢えて「仕事と学びを両立する」道を選びました。その理由は、この原則を実践するためです。

例えば、ある土曜日の授業であるフレームワークや考え方を学びます。それは教科書の中の、抽象的な理論です。しかし、週明けの月曜日、私は事業の収益性分析に、その学んだばかりのフレームワークを早速適用するのです。

すると、教科書では描かれていなかったリアルな課題が次々と現れます。「この事業の『顧客生涯価値(LTV)』を定義する変数は何か」「『顧客獲得コスト(CAC)』に含めるべき費用はどこまでか」。理論と現実の間に横たわるギャップを埋めようと必死に格闘する中で、理論は初めて血肉の通った「自分の知恵」に変わっていきました。この「理論と実践の往復運動」こそ、学びを何倍も深く、強固なものにしたのです。もし休職して学んでいたら、これほど深く理論を体得することはできなかったでしょう。

第5章:「学びと実践のサイクル」を習慣化する具体的な方法

「理論と実践のサイクルが重要なのはわかったが、多忙な中でどう実践すればいいのか」という声が聞こえてきそうです。重要なのは、大げさに考えず、小さく、しかし継続的にサイクルを回す「習慣」をデザインすることです。

  • 15分ブロック法: 毎日15分で良いので、「学びの時間」をカレンダーにブロックします。この時間は誰にも邪魔されない、自分への投資の時間です。
  • 一行要約・一行応用: 本を1章読んだら、その内容を「一行で要約」し、さらに「自分の仕事への応用」を一行書き出すことをルールにします。これにより、インプットがアウトプットに直結します。
  • ティーチング・アウトプット: 学んだことを、1週間以内にチームの誰かに話して聞かせます。「人に教える」ことは、自分の理解度を測る最高のアウトプットです。

これらの小さな習慣の積み重ねが、やがてあなたのプロフェッショナルとしての成長を、非連続なものへと変えていくはずです。

第6章:結論 – 学び続ける者だけが、一流であり続ける

本稿で繰り返し述べてきたように、「Daily Learning」とは、知識を溜め込む行為ではありません。それは「インプット、アウトプット、フィードバック」というサイクルを、日々の仕事の中で高速で回し続ける「行動習慣」そのものです。

インプットは思考を刺激し、アウトプットは世界に変化を与える。そして、その結果から得られるフィードバックが、次のインプットをより質の高いものにする。この好循環を一度起こせば、成長はもはや努力ではなく、自然な営みとなります。

これからの時代、一流のプロフェッショナルとは、保有する知識の量で定義されるのではありません。昨日よりも今日の自分が僅かでも優れていることを実感し、その知的な探求を楽しみ続ける者です。さあ、今日学んだことを、早速明日の仕事で試してみませんか。その小さな挑戦こそが、あなたを一流へと導く、確かな一歩なのです。

以上

執筆者プロフィール

松尾 篤賴

ディレクター/AIM主席研究員

松尾 篤賴

入社以来携わらせて頂いたクライアントは20社以上で様々な予備診断やプロジェクトに従事。テーマ軸では民事再生支援、営業力強化、労働生産性向上、新規事業開発支援、DX前工程として業務プロセスの刷新及び整流化を担当。領域軸では全社、営業、製造、開発などを経験。